みらいへの手紙~この道の途中から~
本編(25分34秒)
一通めの手紙「雨上がりの朝」
飼い犬のハナと散歩をする陽子。人通りのない道、明かりのない民家。閑散とした街の中を歩きながら、どうしようもない孤独感に襲われる。陽子は何が正しいのか、正しい選択とは何なのかを考えていた。そんなある日、避難していた隣家の夫婦と子供が帰ってきた。
二通めの手紙「あたしの先生」
授業中、窓際の席で屋上を見つめているひとりの女子生徒。彼女の視線の先には長い髪をなびかせ、どこか暗い表情の男性がいた。その男性は彼女のクラスの担任だ。「どうして髪が長いの? キショイ!」何故担任の髪が長いのか、その理由を友人に尋ねると…。
三通めの手紙「がれきに花を咲かせよう」
東日本大震災が発生して間もない時期、被災した街並みを唖然と見つめる一人の少年がいた。震災後、少年が通う高校では美術部員主導で「がれきに花を咲かせようプロジェクト」を行っていた。それは文字どおり、がれきに花を描いて街を花でいっぱいにしようというもの。ある日、プロジェクトに参加する生徒に誘われ、がれきに花を描いてみることに。はじめは躊躇した少年だったが…。
四通めの手紙「カツオカンバック」
小名浜港で海を見つめている3羽の海鳥がいた。ウミネコたちは、水揚げのおこぼれをもらおうと小名浜港で漁船が来るのを待っていた。ここ数日おこぼれにありつけていない。ウミネコたちが会話をしながら水揚げを待っていると…。
五通めの手紙「福ちゃんがやってきた」
震災からの復興をめざす小さな村。その村にある日、福ちゃんという小さな女の子がふらりと現れる。福ちゃんは何かお手伝いをしたいと言うものの、農業やボランティアの経験もない。そんな福ちゃんに、はじめは戸惑いを覚える村人たち。しかし福ちゃんは、積極的に村の催事に参加していくうちに、いつしか村にはなくてはならない存在になっていく。
六通めの手紙「エール」
震災の影響で、2017年度から休校となる予定の、福島県立富岡高等学校。県内では屈指のサッカーの強豪校だ。サッカー部にとって最後になるかもしれないライバル尚志高等学校との対決。白熱する勝負の中、富岡高校サッカー部を応援する同級生が、ハーフタイムに思わぬ方法で応援を始める。
七通めの手紙「おだかのひるごはん」
東京の会社に勤務する良太は福島県南相馬市小高区出身。震災後、親を避難させて以来地元に帰っていなかった。ある日、良太は福島が今どうなっているのかふと気になり、冬休みを利用して地元に帰ってみた。街の様子はやはり以前とは違い、通っていた学校も立ち入り禁止になっている。昔の思い出を振り返りながら街を歩いていると、一軒の食堂を見つける。
八通めの手紙「いるだけなんだけど」
仮設住宅からどんどん人が引っ越していく中、事情があって残らざるを得ない被災者の人たち。周りとコミュニケーションが取れないお年寄りが増えていく中、福島大学の学生が仮設住宅に居住し、普通に生活するだけの「いるだけ支援」を行っていた。仮設住宅には若者たちの声があふれ、寂しげだった住宅の雰囲気が徐々に変わっていく。
九通めの手紙「想いの彼方にあるもの」
「『現実を伝えることが大事。』でも、伝えたことで誰かが傷ついていないのか、誰かを不幸にしていないのか、ずっと、ずっとそのことについて考えています。この厳しい状況や深い悲しみをそのまま伝えることができても、それが間違ってはいないのか、本当に正しいことなのか、いつも心のどこかに引っかかっています。」そんなことをある人が言っていた。でも、それでも、想いは伝わるはずと信じてこれからもこの世界を伝えていきたい。夜明けとともに街が動き出し、復興につながっていく様子を風景のみで表現しています。
十通めの手紙「ちかちゃんの卒業」
福島第一原発事故の影響を受け、全村民が避難を強いられた川内村。翌年、村が帰村宣言を出し、学校も再開することになったが、帰還する者は少なかった。川内小学校に戻った4年生は、千果ちゃんだけ。3年後の春、千果ちゃんが一人きりの卒業式を迎える。
十一通めの手紙「雲のかなた」
その子は、両親と北の地から飛来した鳥たちを見に海辺へ行きました。そこで、傷ついた小鳥を見つけます。手当を受けた鳥はやがて群れに戻り大空に帰ってゆきます。その後、悲しい震災がこの地を襲い鳥たちが羽を休めた海辺もなくなってしまいました。成長した少年は、海辺を取り戻す活動をしながら鳥たちが戻って来るのをずっと待っています。そんなある日、大空を翔る一機のプロペラ機が現われます。その自由な姿に自身の願いを重ね夢想します。我に帰り、ふと大空を見上げるとそこには懐かしい鳥たちの姿。おかえり。